【特別誌上レッスン③】ひとりでアンサンブルを(基礎編)/(応用編)

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石本育子先生 特別誌上レッスン③

ひとりでアンサンブルを (基礎編)

前回に引き続き、大人の方のレッスンです。子育てをされながら、大好きなピアノを楽しく深く学ばれています。

メンデルスゾーン:3つの練習曲よりop.104-1

石 本:この曲の構造はどうなっていると思われますか?

Mさん:バスと高音のアルペジオの間にメロディがある形です。

石 本:そうですね、内声がメロディという少々弾きにくい形ですね。右手に山型のアルペジオがあると、和声の役割なのについつい過剰に歌わせたくなるので気をつけて弾いてみてください。

― Mさん、弾いてみる ―

石 本:どうですか?

Mさん:わあ、難しい!右手はメロディを担当することが多いのでつい歌わせてしまいます。

石 本:そうですね。山型のアルペジオですがメロディラインを描こうとイメージせずに「色塗り」をイメージしてみてください。その際、和声の機能(トニック・サブドミナント・ドミナント)や調性の変化にも気をつけてください。

Mさん:はい。でもこれをしながらメロディは歌を歌うように演奏するんですよね。そしてバスもあって…

石 本:そうなんです。バスにはバスの独立した動きがあって、まるで3人がアンサンブルをしているように演奏しなくてはなりません。

Mさん:私はこの曲の内声にあるメロディを美しいと感じて弾きたくなったのですが、和声・メロディ・バスそれぞれをちゃんと演奏しようと思うと本当に難しいです。以前はたくさん練習すればうまくなれると思っていたんですが、構造を理解してピアノを弾くって、身体じゃなくて頭を使うことなんだなあ、とわかってきました。


内藤晃先生 特別紙上レッスン③

ひとりでアンサンブルを (応用編)

内 藤:悲愴ソナタの第2楽章を、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの三重奏に見立てて、パート譜に分けてみたんだけど、僕がヴァイオリンとチェロを弾くから、Hさん、ヴィオラパートを弾いてみて。

(2台ピアノで合奏)

内 藤:ひとりで全部弾いたときと比べてどうだった?

Hさん:三者三様の役割が見えてきました。ヴィオラの16分音符が、音楽を前に進めていくんですね!

内 藤:そう!ひとりで弾くと、右手で2パート取るから、上のヴァイオリンの旋律を歌いたいところで逐一ヴィオラがもたついたりしがちだけれど、パート譜見て合奏すると、まず、そうはならないよね!

Hさん:そうですね!16分音符が並んでる譜面を見ると、前に流れていきたいです。

内 藤:このように、それぞれの人は、パート譜を見ながら演奏するから、パート譜のメロディーラインに導かれて心動かしていくことになるんだ。上行下行や跳躍など、描くメロディーラインが皆違うから、各々違う軌跡を描いていって、その交錯や重なりが、互いを触発して心の化学反応みたいなものを生んでいる。

Hさん:今まではソプラノ以外のパートがソプラノにくっついて平行移動しちゃってたかも…。

内 藤:そうすると人格がひとつになって、アンサンブルに聴こえないよね。それと、タテのタイミングが合いすぎても窮屈。実際のアンサンブルでは、パート譜のメロディーラインによって自然な伸縮が生まれるから、フレーズ内部ではわずかなズレを伴うはず…。一人何役も演じ分けるのが、ピアニストの難しさでもあり、醍醐味でもあるよね!

C.BECHSTEIN

リストやドビュッシー、ビューローなど偉大な音楽家に インスピレーションを与え続けてきた、世界の3大ピアノメーカーの1つ、 ベヒシュタイン。 そのパフォーマンス・芸術性について、ベヒシュタイン・ジャパンの スペシャリストが、公式サイトには載せない、ここだけの話しをお届けします。

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