経験
1989年9月ドイツに渡った私は、ドイツ語で普通に会話ができないとベヒシュタイン工場での作業は難しいということで、当時Düsseldorf近郊Hilden市にあった、現ベヒシュタイン・ジャパンの前身タイヨー・ムジーク・ジャパンの親会社であるタイヨー・ムジークのピアノ部門で、韓国の大宇が製作するRoyaleの出荷調整、そして、ドイツのディーラーから寄せられる技術品質問題解決の為、メーカーとのコミュニケーションを担当した。
ドイツのディーラーの品質問題の多くは外装と音についてだった。
例えば音の問題は、
倍音構成の違和感
中音から低音へかけて等、レジスターが変わる部分における音色のつながりの違和感
整音状態の改善など、
またタッチ感の問題では、
アクション設置位置の誤りに起因するタッチ感の違和感など、
ピアノの製造そのものに関わる問題まで様々だった。
Ibach出身のドイツ人Klavierbauer(ピアノ製造技術者)のMichael Kern、また、たまに手伝いに来てくれるMüller マイスターに、製造の問題の本質についてドイツ語で相談し、韓国のピアノメーカーに毎日のように、慣れないタイプライターに向かい英文ファックスを送った。
必然的に、ピアノの弦設計がどうなっているのか、ピアノのアクションの取り付けはどうあるべきかなど、アフターサービスの観点ではなく、製造部分に食い込み説明しなければならない環境に立たされた。
そのような環境の中で、たまに日本のタイヨー・ムジーク・ジャパンに送るための中古ピアノの査定に、良さそうなピアノがありそうな所へ、バルト海近くの北ドイツからヨーロッパアルプスが近い南ドイツまで、ドイツ全土どこへでも行った(多くがドイツ人セールスマンのディーラー訪問に合わせた同行だった)。
その時間は、ピアノが辿った歴史を感じるとともに、世界的に評価の高いピアノは一体どのような製造の工夫をしているのだ?と、自分が対峙するピアノと頭の中で比較し、その理由を考える機会が得られた、私にとってとても大切な経験だった。(続く)
(加藤 正人)
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